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保護者の思い、保育者への想い

保育園を考える親の会
代表 普光院 亜紀

1 保育園で育つ親

 来年の4月から改定・保育所保育指針が施行されます。
 ご存知のとおり、今回の改定では、第6章に「保護者に対する支援」という章が独立して設けられ、保護者支援が大きくクローズアップされました。
入所児の保護者、地域の在宅子育て家庭の保護者の両方を視野に入れ、特別保育や相談・助言に限定されない幅広い支援の内容が体系的に示されたことは、意義深いと感じています。
 といっても、何か特別な新しい内容なのかといえば、そんなことはありません。多くが、大なり小なりすでに保育園で行われていることではないでしょうか。
それを、もっと意識的に、専門性や環境を活かして、より積極的に、外部との連携ももちつつ、やっていこうと、指針は語っています。
 かつて、保護者への支援といえば、児童福祉法の「保護者に対する保育に関する指導」という言葉に象徴されるように、技術的な相談・助言ばかりが強調されていました。
しかし、育児相談などは、保育園全体がもっている子育て支援機能の、ほんの一部でしかありません。保護者は、もっともっとたくさんの支援を保育園から受けており、そんな保護者たちは「親も保育園で育ててもらいました」と言います。
 たとえば、「保育園を考える親の会」の会員アンケートで、「保育園で学んだこと、感心したこと」を書いてもらった中には、こんな記述がありました。

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「保育参観時の子どもの顔が家庭での顔と違い、とてもにこやかな顔でした。家では早く早くという言葉で生活していて、気がつかない部分だったと思います。」
「家庭の中での子どものようすと、多くの子どもたちとかかわる集団保育でのようすはまったく異なり、わが子の姿を新発見した。ほかの父母と話したり、ほかの子どものようすを見て、自分の育児に自信をもったり、見つめなおしたり、考え方をかえたり、と多くの刺激が与えられた。」
「保育園でのビデオを見て、家でできていないこと(できないと親が思っていること)ができており、びっくりすることが多かった。根気よく見守ってくれている保育者に感謝!」
「親では『まあいいか』ということを、きっちり習慣づけしてくれて、気付いたらいろいろなことを自分でできるようになっていました。子ども同士刺激になるのか、言葉も日に日に増えていきます。」
「子どものやる気を尊重し、失敗しても評価してくれていることにびっくりし、『そういう見方もあるのか』と教えられた。けんかも発達段階の途中の一現象と見てくれたことは、一番印象に残っている。」
「子ども同士のケンカにどう介入するかについて。親や素人はその瞬間しか見ていないが、保育者はその前のいきさつをさりげなく見ていて感心したことあり。」
「保育参加中の先生の対応の仕方が勉強になった。2歳クラスの3月、どう考えても理不尽な怒り方をして遊びをこわし、かみついたりしてしまう子に対して、やさしく、またやる気を出させる語りかけ方をしていた。」
「きちんと目と手をかけてもらうことで子どもの生活が豊かに作られ支えられていること。ごくあたりまえのそんなことを、たんたんと積み重ねていくことの重み。」

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 保育園の保護者は、わが子が0歳から入園すれば6年間、きょうだいでお世話になれば、9年、10年と保育園に通います。最初は、連絡ノートに前の夜のおかずを書かなくてはならないことさえ抵抗を感じていたのに、いつの間にか、連絡ノートのやりとりを楽しむようになり、通う保育園の生活習慣や保育の方針になじんで、保護者自身がいつの間にか「園育ち」になっていきます。
 そして、このように保育園の実践や、そこで育つ子どもたちのようすを見せてもらったり伝えてもらったりすることは、入所児はもちろん、在宅子育て家庭にとっても、学べる部分が多く、大きな子育て支援になると思います。
 また、保育園で保育士さんに子どもの愛らしさや成長の喜びを共感してもらえることも、保護者にとっては大きな励みになっています。
 こういった支援が機能するためには、保育園と保護者が相互理解を深め、ともに子どものことを考えられる関係が成り立つことが、とても大切です。
 

2 「モンスターペアレント」と呼ばないで

 ところが最近、「モンスターペアレント」なる言葉が言われるようになり、学校や園での保護者の姿勢が批判されることが多くなってきました。
「最近の親は変わりました。親として当たり前のことができなくなっています」「なんでも、すぐにクレームで困ります」
 などと、私も、保育者の方から保護者への苦情を聞かされることがあります。どんなことか、と詳しくお聞きしてみると、確かに同じ保護者の立場として残念に思うような事例もありますが、「どうかな?」と疑問に思うこともあります。
 「どうかな?」と思うのは、こんなときです。
・保護者の苦情にはいろいろな背景があるはずなのに、十把一からげに「わがままな苦情」として批判されているとき。
・保育の方法や習慣、決まりなどが絶対化していて、自分たちのやり方が適切かどうかの検討がされていないとき。
・自分たちの問題(人手が足りない、時間がない)なのか、保護者の問題(非協力的、怠慢)なのかの認識がごちゃまぜにされているとき。
 などなど。

 保護者を批判する前に、なぜ親はそう感じたのか、なぜ親はそれができないのか、なぜ親は......と、その背景を常に見ようとしてほしいし、自分たちの信念や習慣を客観的に見つめ直すことは、とても大切だと思います。
 「モンスターペアレント」という言葉をつかってしまった瞬間に、保護者との信頼関係を築くのは、とても難しくなります。相手がモンスターに見えるようでは、心の扉を開くことはできないでしょう。
 保護者が不信感に包まれているとき、一番の薬は「話を聞いてもらうこと」です。小さな不満は、園長先生・主任先生が耳を傾けるだけで消えることもあります。また、保護者の話をよく聞いていくと、職場や家庭での生活のようすがわかり、意外な苦労やストレスがあることが理解できたりすることがあるはずです。
そういった努力をしないで、保護者と向き合うことを避けていると、いつのまにか不満や不信が大きく成長してしまうこともあります。
 もうひとつ。保育園では「毎年同じことの繰り返し」で「わかりきっていること」も、親にとっては、いつも「初めての子育て」「初めての保育園生活」であることが、意外に忘れられていることがあります。
保育士さんが思っているほどには、親は知らなかったり、理解できていなかったりすることも...。基本的なことですが、何事にもていねいな説明が必要です。


3 未来からの使者

 「モンスターペアレント」というか、一見、身勝手な親は確かにふえているのかもしれません。でも、よく考えたら、それは社会全体の傾向かもしれませんね。
親だから、保育士だから、という前に、人と人との関係が変わってきているようにも思えます。
お金であらゆるモノやサービスが買えるようになった結果、どんどん人間関係が希薄になり、お互いに深くかかわらないのが無難とか、自分のことだけで精いっぱいという感覚が広がっているようにも思われます。
 でも、実は、子育ては、それではうまく行きません。わが子だけを、フラスコの中で純粋培養することはできないからです。
 子どもたちは、大人たちに見守られながら、友だち同士で心を通わせ合い、ぶつかりあいも体験していかなければ、人間社会を生きていくための力を培うことはできません。
わが子を愛すればこそ、親は子どものケンカやケガを心配し、ときに過敏に反応してしまったりしますが、そのために、子どもたちのかかわりを薄くしてしまうようなことは避けなくてなりません。
親も、子どもの発達の道筋や保育のねらいなどをもっと勉強して、保育士と親、親同士が互いに信頼しあう関係の中に、子どもがのびのびと育つことができる環境を、協力しあってつくっていく必要があるのだと思います。
 ある日、若いママたちがネットの掲示板で、
「保育園にお迎えに行くと、子どもたちが集まってきて、『○○ちゃんのお母さん!』とか話しかけてくるのがうれしい」
「保育園っていいよね。癒される」
「子どもってかわいいよね」
なんて、話し合っているのを見かけました。
 最初は「うちの子かわいい」だけだったのが、いつの間にか「子どもってかわいいよね」に変わっていける場所が保育園ではないでしょうか。
 「モンスターペアレント」の話などを書きましたが、多くの保護者は、お世話になった保育園や保育士さんにとても感謝しています。
子育てと仕事の両立はまだまだたいへんですが、そんなピンチのときに助けてくださった人たちのことは、きっと一生忘れられないでしょう。
 そして、子どもたちにとっては、保育士さんたちは、保護者に次いで身近な大人。子どもたちの世界観に大きな影響を与える人たちです。
ときに、保育士さんは子どもたちの目標になり、夢にもなります。
「この世界は生きるに値する」
 というメッセージを子どもたちに伝えてくださる保育士さんたちであってほしいし、そうなれる環境づくりが、今、社会に問われていると思います。


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